2008/12/10

車窓



何気なく列車の車窓から眺めている風景が、突然心のどこかのスイッチを入れることがある。

幼いときから汽車で親の郷里へ、長い旅行をしていた。都会から田舎へと向かう窓の外を風景が流れ、それをぼんやり眺めてはいろいろなことを想像していた。林があればその中を誰かと走り回る。川があればそこで泳ぐといった単純なことだったと思う。
車窓の風景は静止画とは違って、空間としての奥行きを感じさせるので、どこか身体と結びつきながら感覚している。しかも一瞬心に留まった眺めは次々に展開してゆく風景の中で失われてゆく。あ、と感じた瞬間にはもうそこにはない。だからなぜ、その瞬時の眺めが心に響いたのかを調べる余裕がない。ただ、あ、これだこれが世界だ、と思うだけでそれ以上進むことが出来ない。

しかしいまだに、車窓からぼんやりと眺めていると、そんな風景に出会う。なぜそう感じるのか、いまだにわからない。いつかそんな写真を撮ってやろう、と思っていてなかなか実現しなかったが、垂井から関が原に向かう途中でそんな風景を撮ってみた。

両側を山林で囲まれた田畑があり、その中にぽつんと小さな森がある。その傍らを曲がりくねった道が登っていく。田畑は奥に向かってわずかに傾斜して高くなり、その幅は次第に狭まって森が迫っている。道は森の影に隠れながら奥へと続いている。おそらく私は、森に沿って曲がりながら続いてゆく道に魅了されたのだが、こうして写真を眺めていてもいったいその原因がどこにあるのかを突き止めることが出来ない。

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